普段支払っている住民税が、どのように計算されているのか、どのくらい控除されるのか、ご存知でしょうか。住民税にはそれぞれ金額に違いがあり、会社員と個人事業主では納税方法も違います。ここでは、住民税の計算方法、特別徴収と普通徴収の違い、住民税を抑える方法などについて解説します。
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住民税とは?
住民税とは、市区町村や都道府県の公共施設、教育、福祉、ゴミ処理など、身近な地域の行政サービスにかかる費用をまかなうため、その地域に住む人々が分担して払う税金です。
住民税には「区市町村民税」と「道府県民税」という個人住民税と、法人が納める法人住民税があります。会社員であれば、毎月の給与から天引きされているはずですので、会社員の方は給与明細を確かめてみましょう。
また、個人住民税は、所得に合わせて金額が変動する「所得割」と、どんな人でも等しく同じ金額が課せられる「均等割」があります。この「所得割」と「均等割」を合わせた金額が住民税として納める金額になります。
所得税は、前年度の所得でその額面が決まります。これは扶養家族の人数等で控除額が変わるため、年収が同じであっても住民税が同じとは言えません。
また、住民税は算出方法と税率に地域差がありません。そのため所得や控除額が変わらない限り、どこに住んでも税額は同じです。ただし、地域によっては環境保全にかかる費用という名目で追加徴収を行っている自治体もあります。
住民税の計算方法
住民税は、所得割と均等割を足した額です。所得割は、課税所得に10%の税率を掛けて算出します。一方、均等割は、都道府県と市区町村ごとに1人当たりの金額が決められているので算出は簡単です。東京都を例に挙げると、道府県民税が1,500円、市町村民税は3,500円、合計で5,000円ちょうどになります。
ちなみに課税される所得とは、収入から必要経費を引いた金額から、さらに所得控除額を引いたものを指します。会社員の場合は、基本的に収入は給与所得だけなので、収入から給与所得控除を引いたものを課税所得とします。
住民税を計算してみよう!
ではここから、住民税の計算方法の手順を具体的に解説します。
Step1. 所得金額を算出する
まずは税がかかる自分の所得金額を把握しなければなりません。もしも前の年に確定申告を行った場合には、確定申告書に所得が記載されています。
会社員の場合は、収入金額から給与所得控除額を引きます。給与所得控除額とは、仕事に必要な物品として個人が購入した文具や衣類など、会社には負担してもらえない費用の目安です。これを控除されるべき必要経費とみなすのです。
給与所得控除は、収入金額によって違います。年収660万円未満の場合は「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(所得税法別表第五)」を参照して求めます。年収が660万円以上の場合は、国税庁のサイトで調べることができます。
Step2. 「課税所得金額」を計算する
所得金額から所得控除額を引いたものを「課税所得金額」と呼びます。この所得控除は種類が多く「基礎控除」「社会保険控除」「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」など、全部で14種類あります。
複数の控除が適用できる方は、すべての控除額の合計を出して、それを所得金額から引く形で求めます。
Step3. 「所得割額」を計算する
次に、課税所得金額に、都道府県民税の4%、市区町村民税の6%を合わせた「所得割」10%を掛け、そこから税額控除額を引いて「所得割額」を算出します。
税額控除には「配当控除」「外国税額控除」「寄附金税額控除」など、さまざまな種類があります。たとえばふるさと納税などの寄附をした場合や、株式の配当がある場合などがこの税額控除にあてはまりますので、自分が適用される控除を把握しておくようにしましょう。
この計算で求めた所得割額に均等割額を加えたものが、住民税額となります。
法人住民税の計算方法
法人住民税は、法人がその店舗や事務所などが所在する地域の自治体に納めます。法人住民税は、基本的には事業年度が終了した日の翌日から2か月以内に納めるルールとなっています。
法人住民税には、法人税をもとに算出する「法人割」と、資本金や従業員数などで決まる「均等割」があり、この2種類を合計した金額が法人住民税額となります。
住民税の納め方
個人の住民税は、給与から天引きされる「特別徴収」と、納税者本人が納付する「普通徴収」の2種類の納税方法があります。
会社員やパートなど、勤務先から給与を受け取る人は特別徴収ですが、個人事業主やフリーランスなど、給与所得以外の収入がある人、また退職して求職中の人は普通徴収となります。
普通徴収の場合、自治体から自宅に届けられた納税通知書を確認し、同封の納付書を使って期日までに税金を納めなければなりません。納付方法は1括、と4期分割納付の2種類から選べます。
自分で支払いに行くということは、納付を忘れないようにしないといけないということです。普通徴収に該当する方は、忘れずに納付するようにしましょう。支払い方法は、現金のほか、クレジットカード払いに対応している自治体もあります。
住民税の負担を抑えるには?
控除制度を利用したり、非課税制度の対象となれば、住民税の負担を抑えることが可能です。もちろん条件が該当するかどうかは人によって違いますが、参考までに3つのポイントをご紹介します。
住民税が非課税になる条件を確認する
住民税は、収入や世帯の状況によって非課税になる場合があります。大きく分けると、所得割だけが不要となるケースと、所得割と均等割の両方が不要となるケースです。
同一生計配偶者や扶養親族がいない人で、前年の総所得が「45万円」以下の場合と、同一生計配偶者や扶養親族がいる人で「35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+42万円」以下の場合は、所得割のみが非課税となります。
また、生活保護を受給している人、未成年である・障がい者である・寡婦であるまたはひとり親であり、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は年収204万4,000円未満)の人、前年の合計所得金額が各自治体の定める金額を下回る場合、所得割・均等割の両方が非課税となります。
なお、住民税の非課税限度額を計算する時、扶養親族には16歳未満の年少扶養親族も含みます。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税とは、自分が居住していない自治体から選んで寄附を行った場合に、寄附金額の2,000円を超える部分について、一定の限度額まで所得税や住民税の控除が受けられるものです。
この控除を受けるには、確定申告を行う必要と、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用する必要があるので注意しましょう。また、控除の上限額は年収や家族構成によって異なります。
年間の医療費が10万円を超えるか確認する
1月1日から12月31日までの1年間で利用した医療費が10万円(年間所得が200万円未満の人は、所得合計額の5%)を超える場合、医療費控除を受けることが可能です。上限は200万円までとなっています。
ただし、医療費控除を受けるなら、次の年に必ず確定申告をしてください。
まとめ
住民税は、確定申告書や年末調整の情報をもとに、行政が税額の計算が行いその結果が納税者に通知されるという方式ですので、自分で計算して納付するという必要はありません。しかし、税金の仕組みを知っておくことは大切です。本記事がその助けとなれば幸いです。住民税の額を確認したいときは、会社や役所からもらえる住民税決定通知書などで確認しましょう。また、普通徴収の方は納付期限等を忘れないように注意することも大切です。